つれづれなお話建築デザイン

”自分で考えろ”は果たしてタイパが悪いだろうか?

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Image by Gerd Altmann from Pixabay
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自分で考える?

悩む

UnsplashAhtziri Lagardeが撮影した写真

9月に下記のニュースを読んだ。これは非常に感慨深いと感じたので、いつもの表の家の内容とは異なるけれど、書いてみることにした。

「上司の“自分で考えろ”はタイパが悪すぎる」今ドキの新入社員がすぐに辞めるワケ | 日刊SPA!
せっかく入社したにもかかわらず、すぐに辞めてしまう新入社員が後を絶たない。Z世代を中心に「タイムパフォーマンス」(以降、タイパ)という言葉がよく使われるようになった。かけた時間に対してどのくらいの効…

育った時代・境遇によって考え方が異なる

氷河期

Image by PIRO from Pixabay

次の章で述べるが、昭和生まれなのでどうしても仕事に対して昭和風な考え方があり、書き始めた。しかし書いている内に、話はそうそう一方的では済まされないかもしれない・・・と思い始め、どうしたものかと考えてしまった。9月から2か月近く、この文章はお蔵入りになっていた。

何故なら我妻は1998年頃卒業で、所謂就職氷河期に就職をした人なので、なかなか大変だったらしい。又、美術大学系だったので猶更なのだったらしい。その点では現在の職場で近くにいる女性も妻と同期くらいの年齢で、色々な気苦労をされて今に至る。

私が就職した年は必ずしも景気の良い年ではなかったけれども、就職氷河期というほどでもなく、その後、経済が右肩あがりだった為に、とにかく仕事を覚え、現場に行き一人前になる事を目指してきた。最初は給料が安かったが、それでも我慢できた。先輩は簡単に仕事を教えてくれなかったが、今思えばいい人たちに囲まれていた。

一方、妻が就職した1998年頃というと私が香港にいた時期で、バブル崩壊に続くアジア通貨危機で世の中が不景気になってきた頃だった。我が勤務先も今後のやりくりに翻弄され、リストラの嵐が吹き荒れた時期でもあるのだ。そんな時代だから、就職氷河期に就職を迎えた人は、夢も希望も無い気持ちになったのではないか?と想像に難くない。

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昭和的な私の考え方

昭和のイメージ

ダ鳥獣ギ画
https://chojugiga.com/

前項で、述べたように時代や境遇を考えなければ、このブログへの考え方は書けないのだが、とりあえずは、私の感じた事を書きましょう。私が就職したあの頃は、ただ成長しようと藻掻いていただけだったけれど・・・その点をご理解ください

”自分で考えろ”は果たしてタイパが悪いだろうか?

一から全部自分で考えて作業するというのは、(短期的な視点で云えば)確かにタイパが悪い。おっしゃる通り。しかし、仕事というものを半年単位、一年単位、はたまた十年単位で考えたらどうか?会社を変えるから良いんだ?って・・・でも会社をやめたら、再び全部一から始めることになる。そこでまた同じことを繰り返す。

昭和生まれの私としては、何と短絡的で、短気な方ね!とも思う。 目の前にあるものだけに対処する単純作業であれば、周りの上司は仕事の仕方、要領を教えるべきだし、その方が遥かにタイムパフォーマンスがよい。しかし、そんな仕事がどこにあるのだろうか?

未知の問題を解決する能力の訓練

物販

UnsplashKayle Kaupangerが撮影した写真

ところがどっこい、社会に出た時の仕事はそんな単純作業は少ない。物販だって、技術職だって同じだ。物販は一見して単純な作業の連続に見える。だから初期的には、その単純な作業の範囲でこなすことができるかもしれない。しかしながら、その世界で生きていこうとまで考えていなくても、仮に5年10年も居ると徐々に責任を負うようになる。

その状況になると仕入れ、値段付け、商品配置、売り方、賃貸スペースの対応、人事、スタッフの手の確保、売り上げ、成績等、毎日が応用問題の連続になる。経験上言えることだが、物販は大変である。本気で食っていこうと思ってもそんなに簡単なものでもない。

仕事ができる人になるターニングポイントは”自分で考える”事

現場

UnsplashEtienne Girardetが撮影した写真

スキルを上げる、つまり仕事の出来る人になるという目標があったとする。その目標を見据え、自分なりのロードマップを思い描いてみる。つまり長期的な視点に立つ訳だ。5年後の私、10年後の私、20年後の私がどうなりたいか考えてみる。そういうステップを踏んでみるのも必要ではなかろうか?

私の場合、建築設計という分野で働き、つい昨年定年退職した。就職したての若かりし頃、先輩は私に仕事を与えた。何が何だか分からないことお多かった。しかしながら、その仕事を簡単に解決する方法は何も教えてくれなかった。勿論、誘導はしてくれた。しかし、結局全部自分で考え解決しなければならなかった。

ライオン

UnsplashKurt Cotoagaが撮影した写真

ある時は、百獣の王が我が子を千尋の谷に落とすごとく、先輩は私を現場にほっぽり出した。或いは施主会議に一人で出席させられた。つまり成長する、スキルを付けるという事は即ち大きな諸問題を人に頼らず、自分で解決するという事ではなかろうか?つまりそれが”自分で考えろ”という事に他ならない。

確かに”自分で考えろ”はタイパが悪いと思う。ただ、”自分で考えろ”の利点もある。それは最初から考えなければいけないので、物事を俯瞰的にみる訓練になる。周囲1.5mしか見ていなかった人が、全体を俯瞰してみるようになったらどうだろうか?そこが”仕事が出来ない人”から”仕事が出来る様になる”・・・ターニングポイントではなかろうか?

そして、自ら考え解決の道筋を考え出す事が出来る様になる。この訓練を繰り返すと先輩の間違えにも気が付く様になり、隅に置けない後輩になる。

私の本業:建築設計

建築設計は一見線を引くだけで出来そうに感じる人もいるかもしれないが、設計を進めるために、色々な視点から考えなければならない。考えていく過程で、問題をあぶりだす。法規・機能を満足させ、構造・電気・給排水・機械設備との調整も必要になる。施主にプレゼンテーションを行い、喜んでもらわないといけない

また、請負契約で現場を担当している建設会社に納得してもらわないといけないし、工期があるので先手を打って早く指示しなければいけない。追加工事が絡むともっと難しくなる。損得がはっきり表れ、お金がかかわる厳しい世界なので、おかしな答えを導くと強く反対され、ある時は馬鹿にされる。

新人で現場に行き、分からない用語があると(今と違ってインターネットの無い時代だったので)自分で本屋に行って勉強するしかなかった。現場常駐しても回りの人達の状況は同じた。しかしそれが用語の問題だったら、自分でいくらでも勉強すべきだ。困ってしまったのは

スケールアウトしたスケッチに驚く

ミーティング

Image by Ulrich from Pixabay

あれは前職場にいた頃で、中国のある地方から来たZ君という青年がいた。彼は成績優秀で確か中国でもいい大学を出たはずだ。その為、中国プロジェクトの施主とのやり取りにおいて彼の存在は無くてはならなかった。ただ、彼と打ち合わせをしていて困ったことがあった。それは彼のスケッチ力だった。何だか変な絵を描くなあ・・・と思った。

そこで、場所を変えて、寸法を入れたスケッチをいくつか書いてもらう事にした。

Glass Handrail

Image by dadogi .. from Pixabay

「1100mmのガラスの手すり(スクリーン)の手前に高さ900のw35.5程度のフラットバーの手すりにして、その手すり子はああして、こうして・・・」と指示した。そして、目の前でフリーハンドで描かせてみた。出来たものを見たら、驚いたことに完全にスケールアウトしている。勿論私も、何ミリかずれているだけの事を指摘しているのではない。

それは人から教わるものではない

スケッチ

Image by tookapic from Pixabay

絵は下手でも良い。ポイントを押さえていれば、絵はなんとかみられるのだ。ところがそのポイントが何かという事がそもそも分かっていないらしい。この場合、その相手が「じゃあ、そのポイントを教えてください」と私に言ったとします。その時こそ、私も「自分で考えなさい」という事になる。スケッチのポイントというのは描いて描いて描きまくって、やっとわかる部分というものがある。

それは人から教わるものではない。自分で、自分の方法で会得していく部分で、それを教えられないことは無いけど、ケースバイケースで全部違う。ポイントが分からないというのは、その仕事そのものが分からない人という事になり、手に負えない。一々教えていたら、私のタイパが悪化してしまう。

結局分からない人には、単純労働しか与えることが出来ない。応用が出来ないのだから仕方ない。しかしそれでは堂々巡りになってしまう。

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最後に

結局、自分の言い分だけ書いてしまった。ただ話に聞くと、現在の若者はこの“失われた30年”のどんよりとした進み方しかしてこなかった経済の在り方に辟易しているらしい。そういう中でもなんとか成長したいと藻掻いているのだそうだ。一生懸命藻掻いているのに、リーダーがその気持ちに沿っていないという事もあるのだと聞く。

ある意味藻掻いていたのは私の若いころも同じだ。それを何とかするのは他力本願ではなく、自分の力で切り開いていくしかない。その結果として、すぐにやめてしまうという選択肢を取るのだろうか?

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