建築デザイン昔日の松戸

北松戸工業団地の緑地の今昔

北松戸工業地帯 昔日の松戸
工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月より
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緑化と将来の北松戸工業団地

親水公園

Image by Maciej Cieslak from Pixabay

何年前だろうか、我が同級生が語っていた事があった。こんな感じである。

「北松戸駅の西口は寂しい。そこから栄町方面に歩いても空虚な建物の連続だ。いつの日か、新坂川が親水公園の様になって、工場団地は全て緑地公園になる。駅と緑地公園の間は商業ゾーンでも良い・・・」

夢のような話だったが、私はこういう未来に同調したい。実際、新坂川と工業団地の間の道は細く、歩道らしき歩道もなく、車が飛ばしていて危ない。そこから松戸方面まで歩いても全然面白くもなんともない。途中パンの工場のパンの匂いが漂ってくるくらいのものだ。人間の歩く道というイメージではない。

現状の新坂川は雨水などによる増水時に大量の水を流すために川幅を広げて、切り立った護岸にしている。治水本位で護岸が作られている感じである。しかしながら元々あの川は利水の目的で作られた川で、そもそもの根本の存在理由を考え直すべき時期に来てはいまいか?

例えば、護岸の内側に2-3m程度の人行道を作り、道路よりも1.5mほど低くする。ところどころバルコニーのような場所があってもよい。又は、川沿いの軽微なレストランやショップがあってもよい。夏炎天下にあの道を歩くと熱中症になりそうなので、樹木灌木を所々植えて涼む場所も欲しい。この人行道はところどころで対岸の同様の人行道と行き来が出来る。

緊急用船着き場は通常時は川下りの船着き場にしてもよい・・・なんて事を夢見るのだ。

川沿いの道

UnsplashRoméo A.が撮影した写真

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北松戸工業団地

北松戸工場団地

北松戸工場団地
2023年1月20日撮影

さて、ここからは、北松戸工業団地のお話をしようと思います。我が理想をいきなりだしましたが、あくまでもご参考まで

工業地帯、工業地域、工業団地という言葉について

この投稿では北松戸の工業地を北松戸工業団地と呼びたい。一般的に工場の集まっている地域、エリアは工業地帯、工業地域と呼ぶ。この中でも京浜工業地帯、阪神工業地帯、中京工業地帯、北九州工業地帯はかつては「四大工業地帯」と称した。

工業地帯とは戦前から昭和30年代までに形成された歴史の古い工場地であり、高度成長期以降に形成された工場地については、京葉工業地域、瀬戸内工業地域の様に工業地域と呼びたい。また、北松戸の工場地の様に規模の小さい所は工業団地と呼ぶ方が理にかなっているし、また小学校の教科書でもそのような教え方をする筈なので、なるべく合せていきたい。

ただし、本投稿で取り上げる工場適地案内書は昭和37年10月に発行された冊子であるが、この中での言葉使いは勝手に替えるわけにもいきませんので、原書通りに表記します。

 

現在の北松戸工業団地

先ずは現状の北松戸工業団地を撮影してみました。どんな印象持たれますか?

右の一番下の写真はまだ植物がある方で、ただ植えただけで管理がされていない印象を受ける。

1969年の北松戸工業団地の工場プロット

フルスクリーン表示

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工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行

これは松戸市が昭和37年に発行した工場誘致の為の資料で、北松戸、馬橋、稔台、松飛台の四つについて書かれている。ただ、その後、馬橋地区は西口が主に住宅の用途が増えた事が原因しているのか何とも言えないが、現状工場団地は北松戸、稔台、松飛台の三つとなっている。

内容は当時の状況を表していて非常に興味深いので、主に北松戸工場団地までをレビューし、若干の意見を書いてみようと思う。

工場用地のご案内(工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P1より)

松戸市は東経139度45分北緯35土7分に位置し、千葉県と東京都の境界線を流れる江戸川流域の中ほどにあって東京駅から北東に直性17kmの距離にあります。本市は昭和18年4月1日人口40,433人で市制を施行して以来、農村都市から商、工、住宅を共に合せた首都東京の衛星都市として発展しつつあり、今日人口113千余人を有する中堅都市たる実績を備えると共に、

都市計画を基調とした日本住宅公団による住宅団地造成に伴う約5000戸の住宅開発を始め、工場誘致事業による70余工場の進出の決定(大半はすでに操業)等内陸工業開発事業としても他に例を見ない飛躍的発展を見ておりますが、さらに本事業を推進し、進出を希望される企業の為に下記の通り用地のご案内を申し上げます。

1. 事業の趣旨および目的 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P2より)

近年における日本経済は誠にめざましいものですが、その発展の中心をなしているものは工業生産の進展であります。
当市におきましてはこれ等の点を考慮いたしまして、用途地域について関係各省との調整を了し、工業地帯の開発に着手いたしましたが、その目的とするところは次の点であります。

  1. 我国工業の成長発展
  2. 千葉県内陸部の工業的開発と、調和ある発展
  3. 本市の財政力の伸長と市民の福祉向上
  4. 近代都市としての産業構造の具備
  5. 計画地区への企業の集団化

2.用途の選定 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P2より)

工業地帯の開発を計画的に進めるためあらかじめ工業開発に適した地点を剪定し、これを中心にして起業の受け入れ態勢を整備している。このため都市計画法による用途地域や工場立地の調査等に関する法律による工場適地調査ずみの箇所から開発地点を各地域に分散配置いたしております。

3.当市における工場立地条件 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P2より)

  1. 我が国政治経済の中心であり、かつ最大の消費市場である東京都に隣接していること。
  2. 道路網が整備され輸送上便利であること。
  3. 市内中央に送電線が縦貫しており電力事情に恵まれていること。
  4. 工場開発に適した敷地が存在していること。
  5. 気候が温暖であって、生活および作業に好適であり、且つ自然的災害が少ないこと。

4.開発方法 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P3より)

工場誘致は次の3つの方法によって進めています。

  • 市が設立した開発協会による方法 市が設立した財団法人松戸市開発協会が工場用地を買収し企業に分譲し工業開発を進めていく方法。
  • 市の協力による方法 企業の依頼により、市が用地の買収に協力することによって工場開発を進める方法。
  • その外、市の指導により市内の業者或いは企業者自らが買収し工場用地を開発する方法。

5.用地の分譲 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P4より)

松戸市開発協会によって取得した用地の分譲は次の要領で行います。

  1. 募集の方法 ひろく一般から印刷物広告等により募集します。
  2. 譲受人の決定 申し込みされた方について、選考によって決定します。
  3. 分譲の価格 価格は用地の造成に要した費用(用地買収費、造成工事費、利子事務費等)を基準にしてきめております。
  4. 代金の支払 代金は契約時に半金、残り半金は農地転用後、登記完了の際に支払うことになります。
  5. 申込の資格 企業の選定については、その規模及び業種については特に問いませんが、一般的資格は次の通りであります。
  • 国民経済上重要産業を営む企業であること。
  • 地域の開発に寄与する事業であること。
  • 工業用水を誘致地区の適正用水量以上に使用しない企業であること。
  • 汚水、ばい煙、騒音、悪臭その他がその地区の民生上あるいは営農上許容しうる範囲内の企業であること。
  • 工場建設計画が確実で工場用地を合理的に使用する企業であること。

6. 道路の現状と将来 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P5より)

道路番号 種別 道路名 区間 幅員
1 一般国道 国道六号線 東京-仙台 18-19m
2 県道 葛飾橋-矢切線 葛飾橋-栗山 15m
3 県道 松戸-五香線 岩瀬-五香 16m
4 県道 竹ケ花-金ケ作線 竹ケ花-金ケ作 12-18m
5 市道 根本-松飛台線 根本-松飛台 11-12m
6 市道 北松戸駅-店屋敷線 北松戸駅-松戸新田 11-15m

松戸市位置図(工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行より)

松戸位置図

工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行より

工場適地図 (工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P6より)

工場適地図

工場適地図 工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行より

鑿井柱状図(北松戸)(工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P6より)

(道草亭ペンペン草解説)

鑿井(さくせい)柱状図とは、要するに井戸を掘った際に調査した柱状図ではないか?これによれば、少なくとも四か所の井戸についての柱状図なのだろう。また、ストレーナーと書かれている。これは水脈のある所で、水を抜く為の穴が開いている場所であろう。つまり図で言うと太い線で描かれた層が水脈のあるそうなのであろう。

ストレーナーがだいたい40-60メートル付近、或いは70-80メートル付近にあるようだ。これをご覧になると分ると思うが、若干砂利の層があるものの、後は砂と粘土が繰り返されている地層である。確かに砂や砂利の層では一定のN値は出るだろうが、それは垂直荷重の力の場合、有効であるものの、横の力が働いた時には液状化現象が予想される。

北松戸地区概要(工場適地案内書 松戸市 昭和37年10月発行P9より)

  1. 用地名 北松戸工業用地
  2. 用地所在地 自上本郷~至根本
  3. 用地面積 工業専用地域 52ha (157,300坪)、準工業地区 44ha (133,100坪)
  4. 用地概況
    この用地は常磐線北松戸駅より南西に国鉄常磐線と国道六号線に添うた水田地帯である(根本地区については一部住宅が密集している)。国道六号線の改修新設により市街地を通過することなく常磐線とは立体交差により、東京方面に行くことが出来る。又貨物取扱駅の松戸、馬橋両駅とも近距離にある。地下水も容易に取水出来、上水道も県営のものが敷設されている。排水については簡易であるが、電力については需要の増大の場合、松戸変電所の増設を東京電力の協力により行うことになります。この用地は水田であるため、埋立てが必要であるが土砂の取得は用意である。

    (道草亭ペンペン草解説)

    ”国道六号線の改修新設により市街地を通過することなく常磐線とは立体交差により、東京方面に行くことが出来る”と書かれているが、実際に市街地を通過せずに立体交差で繋がったのは、竹ヶ花と馬橋の跨線橋だと思うが、常磐線の複々線以降ではないか?ただ、常磐線の複々線化される前は北松戸駅北の踏切でかろうじて繋がってはいたが、当時は立体交差ではなく、常磐線との平面交差である。

  5. 北松戸工業団地

    北松戸工業地帯

    工場適地案内書
    松戸市 昭和37年10月より

  6. 土地造成
    この用地は水田であり、埋立造成が必要であるが、当地付近より土砂の取得は容易である。用地内の道路造成については11m-8mの新設道路を作り国道に接着させる。用地内の一部南花島地先の水田については区画整理の計画がある。

    (道草亭ペンペン草解説)

    項目4でも書いたが、国道に直接道路を接続させたのは常磐線複々線化以降なので、後年ですね。

  7. 地質及び地番
    地質については、別図柱状図の通りであるが、地盤については第三種に属し砂礫層までの距離については3m-5mとなっている。地耐力については8t/m2程度と推定される。

    (道草亭ペンペン草解説)

    地盤が第三種とある。素人が聞いただけだと何のことやら?だと思われるが、これは言い換えれば、”軟弱な地盤”と言い換えられる。
    軟弱な地盤である事をあからさまに書きたくなかった当時の行政の姿が目に浮かぶ。

    第三種では、住宅等では1.5倍の壁量にするなど、揺れに対する配慮が必要だ。新耐震の前の法律では、どこまで第三種を考慮に入れたのか、何とも言えない。
    又、砂礫層までの距離が3-5mとある。しかも8t程度という表現が心配になる。多分、8tもなくて、実際地耐力を書けなかったんじゃないかな?と邪推する。心もとない地耐力だと思う。とは言え、その程度の地耐力だとすると当時は柱状改良工事をしたのかもしれない。

  8. 交通
    (イ) 道路
    本用地の道路については「工場適地図」に示したとおりであるが、用地より100mの距離に国道6号線が通過しているので、東京、千葉、水戸方面への道路網は完全に整備されている。
    (ロ) 鉄道輸送
    この用地の最寄り貨物駅としては、国鉄松戸駅か、同馬橋駅で、駅までの距離は用地の中心より松戸駅及び馬橋駅へそれぞれ約1500mのところにある。

    種別 駅名 線名 引き込み線建設の可否及び建設費用問題点
    国鉄 松戸駅 常磐線
    国鉄 馬橋駅 常磐線

    (道草亭ペンペン草解説)

    松戸駅は1967(昭和42)年8月1日貨物の取り扱いを廃止。                馬橋駅は1971(昭和46)年4月20日貨物の取り扱いを廃止

    引き込み線はダメでも専用線はどうもあったらしく、馬橋駅の東口で、現在はどうなのかはよく分からない。http://railwaytrackdiagrams.web.fc2.com/index.html

    (ハ) 通勤
    上野~松戸(国電)1.88km27分
    上野~4北松戸(国電)2.00km30分
    松戸駅~用地(徒歩)10分以内
    北松戸駅~用地(徒歩)5分以内

    (道草亭ペンペン草解説)

    北松戸駅から北松戸工業団地に到達する為に5分以内というのは理解できるが、松戸駅から徒歩10分以内で北松戸工業団地まで到達するのは無理だと思う。どういう計算をしたのか?

  9. 用地と電力の関係
    当市には上越系統、千葉新線、66,000KVA,東千葉線154,000KVAの特高線が市内を縦貫しており、現在は松戸市上本郷地先の松戸変電所(10,000KVA容量)より用地に供給されている。しかし工業団地造成に伴い、これが電力需要も急速に伸びておりますので、近い将来これが変電所の増設を行う様東京電力と接渉中である。自家変電を必要とする多量の電力消費企業については、前述特高線より分岐導入する事になる。
  10. 用地と都市ガスとの関係
    市川、船橋、松戸、柏の各市並びに東京都の一部を供給区域とする京葉ガスKKより、当市内に高圧本館が敷設されているが、本用地には現在のところ敷設にいたっていない。用地より本館までの距離は約1.5kmでこれより都市ガスの飲用については種々問題がある。しかし京葉ガスKKが比較的近距離にあるので、用地にガスホルダーを建設、これにより団地供給することは十分考えられる。
  11. 用水
    (イ) この用地で大口に地下水を利用している工場に、○印○業KKがあるが、その現況は下記のとおりである。

    No 調査井戸及び地点 井戸の種類 揚水実績(m3/日) ポンプ能力光景馬力 収水深度m 水温 色及び清濁 沈滓 臭味
    1 ○印○業KK千葉工場 深井戸 2,500l/min 8吋85馬力 182 無色透明 認めず 異臭味なし
    2 大○電○○業KK 深井戸 3500石/24h 6吋x5VP 90 無色透明 認めず 異臭味なし
    No 反応(PH) 硝酸性窒素 亜硝酸性窒素 アンモニア性窒素 塩素(mg/l) 過マンガン酸カリ消費量(mg/l) 蒸発残渣量(mg/l) 総硬度(mg/l)
    1 微弱アルカリ性 検出せず 検出せず 微量 90 3.2 132.0 68.0 103
    2 微弱アルカリ性 検出せず 検出せず 検出せず 71 2.4 136.0 4.5 0.03

    (ロ) 上水道の敷設については、古ケ崎951番地の千葉県水道局江戸川水源工場より200mmの水道管が敷設されて用地内工場はこれが供給をうけている。

  12. 用地よりの排水
    本用地には新坂川の用水路16町落の排水路等があるが、これらはすべて農地の灌漑用揚排水路をかねた目的として改修され維持されてきたものである。本工場用地の位置はこれらの揚排水路等と江戸川との合流点に近い所にあるためさして農地に被害を及ぼす恐れはないものと思われるが、なお残余農地が存在しておりますので工場排水等については公害の恐れのあるものは浄化施設の完備が必要と思われる。
    用途と法律との関係農地法による農地転用の手続きが必要であるが、農林省、建設省、首都圏整備委員会との間で予め調整を了している地域である。

緑地と北松戸工業団地

forest

Image by Valentin from Pixabay

緑地の話をする前提に工場の法律について触れる必要がある。工場には工場三法というのがあった。工場等制限法、工業再配置促進法、工場立地法である。ただし、前者二つはすでに廃止されていて、残っているのは工場立地法だけになっている。工場立地法は昭和34年の「工場立地の調査等に関する法律」が前身で、その後公害などの影響も手伝い何度も改正されて、現在の工場立地法になっている。

工場立地法1973(昭和48)年の改正

特に1973(昭和48)年の改正では一定の緑地の義務化が盛り込まれた。当時の公害はいかにインパクトのある出来事であったのかが分ると思う。緑地が20%,緑地以外の環境施設面積5%で生産施設以外に合計25%(全部緑地でも構わないが、色々な規定があった)の環境に関する規制が出来た事になる。

工場立地法1997(平成9)年の改正

この内容では難しいと色々な反対があったのだろう。また、バブル崩壊後で企業倒産が続いた時期という背景もあったのかもしれない。結局1997(平成9)年の改正では、地方分権化と大幅な緩和が行われ、ある意味、骨抜きな内容になってしまったのかもしれない。どのくらい骨抜きかと言えば、実際にGoogle MapやGoogle earthで北松戸工業団地を見てみると良い。

殆どが敷地周囲に申し訳程度の樹木が植えられている程度というのが現状だ。

工場立地法2004(平成16)年の改正

壁面緑化や屋上緑化などが生産施設の一部と重複していた場合、緑地面積の25%まで算入

私の意見-1:壁面緑化の算出方法を改善してほしい

壁面緑化

Igor SchubinによるPixabayからの画像

重複緑地を25%までというのをもう少し何とかならないものか?地面に植えるのと違って、屋上や壁面の緑化は手間がかかる。特に壁面緑化はただ、そのまま緑化しても、いずれ枯れてしまうので、潅水装置が必要になる。管理も必要。つまりお金がかかる方法なのだ。松戸の現法では、壁面緑化の高さが1mであろうと10mであろうと、高さは参入せず、一律壁面緑化の巾の長さx1.0mで計算される。

つまり壁面緑化の巾が10mだったとして、高さが1mの場合、壁面緑化の見付は10m2でそのまま10m2として参入,しかし、高さが10mの場合、壁面緑化の見付は100m2なのに緑化面積としては10m2で参入される。後者の方が手間も費用もかかるし、しかも環境の面では優れているのに、ちっとも報われない。

こんな法律では法律を通すだけ為の形式的な緑地になってしまい、本来の環境を考えた壁面緑化からは程遠い。枯れ木同然の木を植えるなら、壁面緑化の方がどれだけ、視覚的にも素晴らしいか分からない。

シンガポールではどうか?

庭園の中の都市(A city in a garden) シンガポール

シンガポールに二年ほど住んでいたが、非常に緑の多い国だった。あの国は以前、Garden Cityを国策にしていたが、ある時からそれがレベルアップして、庭園の中の都市(A city in a garden)を国策とするようになった。緑を多くする政策は建国当初から始まったとされているが、建国当初は実際はジャングルばかりで、蚊も多くマラリヤやデング熱に怯えていた国だと思われる。

しかし長い時間をかけて、そういった不潔な森の状況を乗り越えた。自然林を伐採し、人工林に替え、蚊が発生しない様に水たまりなどの規制をしている。だからこそ、今のシンガポールがあり、庭園の中の都市を国策に出来るほど、コントロールされているという事になる。実際私がシンガポールに赴任した直後は我々の住まいに保健所の査察があった。

網戸はついているか、バルコニーに不用意に水ガメなどを置いていないか・・・ダメな場合改善命令が下される。

シンガポールの建築

こんなユーチューブがありますので見てください。

Green Plan 2030

Greenと言っても、必ずしも緑地ではなくどちらかというと省エネの意味やSDGs(持続可能な開発目標)の政策の意味合いが強い。

シンガポールその他

Green Websites | Green Future
52 websites and blogs in Singapore that cover nature and environmental topics BCA Green Mark BCA Green Mark is a website...

シンガポールは国を挙げて、緑を増やす政策をしています。高い緑地率で、グランドレベルに緑地が設置出来ないなら、壁面緑化でも良いよ、屋上緑化でも良いよ・・・という感じなので、見た印象は建物から植物が溢れているようにも見えます。日本ではここまでは無理かもしれませんが、それに近い事は出来るんじゃないかな?と思う訳です。

国内のその他の例

京葉工業地帯のA工場内

A工場敷地内

A工場敷地内
千葉県姉ケ埼
2022年7月29日撮影

この工場は完全に埋め立て地に建設されたもので、緑地を作る事も色々と大変だったらしい。そこで、東京農大の名誉教授の意見を取り入れ、先ず外来種の樹木を植えて、樹林を構成し生態系が安定してきた所で、潜在自然植生に従う在来種に植え替えるという手間のかかる方法で、まだ途中段階であるが森を構成している。

琵琶湖付近のB工場内

これは世界的に知名度の高い電化製品を製造している工場であるが、道路を挟んで敷地の対岸にある駐車場横の湿地をビオトープとして完成させている。規模が小さいものの、それなりの工夫は感じる。

最後に

この記事では、現状の北松戸工業団地と未来の緑化をテーマに書いてみた。北松戸工業団地は工場立地法をベースに計画されてはいるものの、実際に団地内を歩くと生産工場ではなく、物流拠点が多くひしめいているのが分る。物流拠点は工場ではないので、工場立地法からは外れる。この問題が、北松戸工業団地の緑化が進まない問題であると思う。

もう一つは法律重視で計画すると緑化の規制にうまく対応出来ない工場の立場も理解できる。ただ、現在はSDGsの世の中に突入しており、本来の意味での環境を考えざるを得ない世の中になっている。つまり、「物流拠点だから関係ないのだ」という考え方は改めなければいけない世の中になってきている。

同時に緑化の方法はシンガポールでの例を出したが、フレキシブルに壁面緑化、屋上緑化を取り入れられるようにすべきだ。壁面緑化は壁の巾に1mの奥行きとする硬直した法の適用は改めるべきだ。また、緑地面積の25%までしか、壁面緑化や屋上緑化を組み入れられないのも、問題である。

壁面緑化の面積に応じた緑地面積の算入を積極的に進めなければ、本来の環境を考えていないことになってしまう。私がこの記事を書きながら思ったのはそういう点である。

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