松脂(マツヤニ)
どうしてこれを書こうかと思ったかというと、小5の頃松脂遊びが流行ったからだ。一度別ページで少し触れたが、改めて松脂とは何かという視点と共に、ミニ研究してみた。
ノアの方舟
松脂と思われる材料が旧約聖書『創世記』に出てくる。ノアの方舟(Noa`s Ark)のお話しである。ノアの方舟のお話には「舟はゴフェルの木で作られ・・・」とある。このゴフェルの木を調べると、マツ類の木であるという説とイトスギ類の木である説など色々とあって定まっていない。
又、ゴフェルの木で作られた「方舟の内外を木のタールで塗った」とあり、どうやらこれは松脂ではないかという説がある。確定はされていないようだが、松脂で塗って防水にしたとすれば、合点がいく話しである。それにしても、そんな神話の時代から松脂が防水用に使われたと考えるのも又、非常に興味深いのだ。
あつまれ動物の森とコハク
松の木を見ているとヤニがベタっとついている事がある。あの松類の樹液が化石化した物が琥珀と呼ばれる。琥珀(コハク)はゲーム”あつまれ動物の森”でも登場する。ゲーム内でコハクは1200ベルで取引される。ちなみにゲーム”あつまれ動物の森”でのコハクは所謂虫入り琥珀で、ゲームのこだわりが分かるところだ。
高額な琥珀
虫入り琥珀は虫無し琥珀よりも高額で取引される。それだけに偽物も出回っている。琥珀は英語でAmberと書く。一般的に琥珀は茶系の色が有名だが、青色の琥珀もあってこれはBlue Amberと言いえらく高い。
千葉県と琥珀
公益財団法人千葉県教育振興財団の公開資料「千葉東南部・千原台ニュータウン内出土の縄文時代石製玉類」小林清隆氏著よれば、昭和47年に始まる千葉県千葉市の南西部から市原市の北西部の地域、つまり千葉東南部ニュータウンと千原台ニュータウンの造成をする際、数多くの遺跡発掘調査が実施された。
このエリアには旧石器時代から奈良時代/平安時代にかけての遺跡が多いらしいが、その中でも千原台ニュータウンの縄文遺跡の中に琥珀の玉類が多く出土したらしい。以下資料参考
http://www.echiba.org/pdf/kenrenshi/kenrenshi_069_2.pdf
もしかすると卑弥呼も琥珀の勾玉を首から下げていたかもしれない。これは非常に興味深い事だと思いませんか。
ジュラシックパークと琥珀
又、この琥珀は映画「ジュラシックパーク」のストーリーの中で、非常に重要な位置づけになっている。この琥珀の中の蚊の血液を抽出するとそれは恐竜から吸った血液で、その恐竜の血液のDNAを使い再生させると・・・というお話。
松脂(マツヤニ):ロジンとは
松脂(マツヤニ)or ロジンとは、松類の樹木を傷つけ得られた樹液を精製し、テレビン油を取り除いた固形物(ガムロジン)を指す。Rosinと書くが、私は当初樹脂の意味のResinの読みが訛っているのかと勘違いしていた。どうやら別物の様だ。
そういえば、昭和40年代の建築材料でリシン吹付というのがあった。でも、スペルはLysine Sprayとか Lythin Sprayと書くらしく、ドイツ語ではリジン、英語ではリシン。どうやらこれも関係がないようだが、昭和の頃の建築材料はリシン吹付だけでなく、所謂ボンタイルとかゾラコートなんてのもあった。ボンタイルは吹付タイル仕上げの代名詞の様な仕上げ材だった。どこにでもあった。
ゾラコートは駅の壁などに使われていた例が多く一見安っぽい仕上げの所が多かったが、実は顔色や粒子サイズの調整をするとえらく、綺麗な仕上げになる。「え?これがゾラコートなの?」という感じがする。話がそれた。松脂に話を戻す。
松脂の用途
野球で使われるロジンバッグ
主要な用途として有名なのが野球のロジンバッグで、ピッチャーが滑り止めに使う。大谷選手はロジンバッグを使わないケースが多い。細かいルールがあって私にも良くわからないが、ルールに従っているのか、或いは共用で使うために病気の感染を恐れる為なのか・・・
弓道のくすね
弓道のくすねも同様で、弦に当たる箇所に塗る様だ。慣用語で”手ぐすねを引く”という言葉があるが、これは弓の道具にくすねを引いて、いつでも戦える様に準備をする事から来ている。
バイオリンでのマツヤニ
ボルダリングの滑り止め
ボルダリングの滑り止めはチョークと呼ばれていて、所謂炭酸カルシウムの主成分だけのものと、ロジンが含有しているものがある。ただ、炭酸カルシウム分は水洗いが効くが、ロジンは水で洗っても落ちない。
ミツロウラップ
工業用製品として使い捨てでないミツロウラップ(エコラップ)もやはり松脂が使われている。ただ、家庭でもこれを作る人が居る。驚きだね。上の動画では、新聞紙にクッキングシートを敷き、それを下敷きとして、ミツロウを塗る木綿の布を置き、その上に細かく砕いたロジンを満遍なく置き、その上にミツロウを細かくしたものを同様に満遍なく置いていく。
行きわたったらクッキングシートを被せ、アイロンでミツロウなどを溶かしていく。ここではどうやらマツヤニの役目はミツロウと布との間でうまく接着できるような事らしい。
製紙用のサイジング材
サイジング剤、或いはサイズ剤とは、ペン書きや、印刷するときのインクの滲み防止の為に入れる材料。紙は元々中国で発明されたもので、当初はサイジング剤として、石膏、膠、澱粉などが使われていたが、世界に広がっていった。欧州ではゼラチンを使用したが、ドイツでは近世に滲み防止の為の製紙用材料として、松脂が使われた。これが広く伝わった物らしい。
欧州から伝わった紙は洋紙と呼ばれ、このロジンを使ったサイジングは、ロジンを紙の繊維に定着させる為に所謂硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を使った。この工程において、紙が酸性になり酸性紙になる。ただ、この洋紙は寿命が持たないという問題が出て、1980年頃から中性紙を使うようになった。
又、ハリマ化成中央総合研究所の文書によると、松脂から抽出するガムロジンをサイズ剤に使う方法は、コスト高になるそうで、昭和40年代前半からはトールロジンという松の繊維をパルプ化する際に副生するトール油を精製する段階で得られるらしく、このトールロジンが主流なのだそうだ。
ハリマ化成株式会社 中央研究所「パインケミカル(松脂化学)産業の歩みとグローバル展開」
松脂遊び
松脂遊びとは先述した”松類の樹木を傷つけ得られた樹液を精製し、テレビン油を取り除いた固形物(ガムロジン)”を使う。固形物だが細かく砕けるので、細かくしたものをジーンズなどに擦り付け、指でつまむとキュッキュッ!と音がする。これが面白い。クラスの中で大流行りだった。
松脂事件
そんな面白い遊びだったが、ある時同級生のジャイアンが大きな塊の松脂を持ってきてから、そんなにたくさんあるなら僕も欲しいという子が複数現れた。同級生による宝島を探す話に発展し、その宝島に行くことになった。私自身は宝島探検隊に参加していなかったが、帰ってきた同級生によると「すぐ近くの工場だった」という。
そうして、工場の人に見つかり大変な事になったという。これは学校に通報され、後に松脂事件として記憶に残った。そんなお話である。
松脂が置いてあった工場は何処?
松脂があった工場がどこだったのか、はっきり覚えていない。あのごたごたがあった後、一度見に行ったことがあった。新坂川を遡りヤマザキパン工場を超えて暫く歩いた場所だったと思う。当時同級生に連れられてあの工場を見に行くと、屋外で、しかも工場の入り口のすぐ近くで、袋に入った松脂の塊が雑然と山の様に積まれていて、あまり大事に扱われていた様子ではなかった。
あの工場は何の為に松脂を置いて在ったのか?果たして工場の場所は何処だったのか、改めて調べてみた。1976年頃の住宅地図を見ると合同酒精の南西方向、キングジムの新坂川側にN紙業という工場の文字を見つけた。ここは段ボールやその他の製紙をしていた所らしい。であるとすれば、サイズ剤(サイジング剤)として松脂を使用していた可能性が高い。
ただ、1967(昭和42)-1968(昭和43)の頃だったので、もしかするとサイズ剤(サイジング剤)が、トールロジンに入れ替わる頃で、所謂ガムロジンが不要になって、工場側も扱いに困っていた頃かもしれない。それで、あんな場所に雑然と置いて在ったんじゃないか?今となってはよくわからないが、どなたかご存知の方がいらっしゃったら教えていただけないか?
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