つれづれなお話建築デザイン

デザインツール

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Stefan SchweihoferによるPixabayからの画像
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建築デザインのツール

私は大学の建築学科を卒業した後、東京にある某設計事務所に43年間勤務した。思えば長いような短いような勤務生活だった。大学時代はケント紙に製図をした課題が多く、プレゼンテーションとしての製図だったと思う。大学に入学し当初はT定規で図面を描いていた。後にムトウ工業ののドラフターを買うように勧められ、親に頼み購入した。 自宅の狭い部屋で、でかい製図版を立てて、背筋を伸ばした感じでドラフターで図面を描いていった。それが学生の頃の製図姿勢だった。 大学卒業し、就職先で製図室に入るとドラフターを使っている人は皆無だった。使っているのは平行定規だった。元々はアメリカから持ち帰られた平行定規、これを改良し,建築家鈴木彰氏と大井工場で開発された製品だった。カルチャーショックだった。 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902271083635741   しかしながら、使い始めてみると平行定規は、軽いし、軽快で使いやすかった。平行定規は製図版がほぼ天井を向いている事になるので、描いている合間に、空いているスペースでスケッチも描ける。ドラフターだとこうはいかなかった。ドラフターはどちらかというとデザインをするというよりは、製図屋さんの為の道具に思えてきた。

そうだ、私は設計、デザインをする為にこの業界に入ったのだ。そう思いなおした。次第に平行定規に慣れていった。こうなってくると、平行定規以外でどうやって図面描くの?って感じになっていった。  

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線を描く姿勢

美しい線を描くには(いや、いまだに自分で美しい図面が描けると思っていないのだが)、腕の使い方手の使い方など、線の最初からエンドまでの間に極端な変化があっては良くなくて、一気にす~と線を引き、エンドでピタッと終わる事を繰り返す事になる。同時に、図面台に肘が乗っていたり、掌が付いていると、平均的な線が引けない。 従って、筆記具を持つ右腕、右肘は自由に動く様にしておく必要がある(左手で筆記具を持つ人は左肘という事になる)。例は変だが、映画”Shall we ダンス?”でリード側の人の右腕がエスコートされる側の肩下付近に手を置き、その際右肘がグッと上がる。あそこまで上げなくても良いけれど、あの感じかもしれない。 https://natalie.mu/eiga/film/141560 同時に、柔らかい印象のメリハリのある図面を描いていくためにはなるべく柔らかい芯を使い、全体としてアクセントを付けながら描いていくことになる。しかしながら、柔らかい鉛筆を使うと、鉛筆の粉が散る事にも繋がるので、どうしても図面が汚れやすくなる。さらに、体の一部が図面に接触しているとどうしても図面の汚れに繋がっていく。 そのため、そうならないような線の引き方が必要になってくる。つまり、映画”Shall we ダンス?”の様な感じで、無理の無い程度で、図面台から掌と腕、肘を浮かせてどこにも力が入らないような感じで引いていく。 やはり筆記道具の内、ホルダーから自分の分かる事を書いていきたい。

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ホルダーについて

ステッドラーのホルダーと芯

自分の職業はそもそも建築設計。ペーパレスになった現在でも、鉛筆、消しゴムなどの文房具はよく使う。学生の頃は、ステッドラーのホルダーと鉛筆芯を買い、図面を書いていた。このステッドラーのホルダーは当時の標準筆記用具で、当たり前の様に高めの商品を買って使っていた。 この当時には気が付かなかったが、後にユニを使い始めてみて、ステッドラーの芯の方が、硬くて折れにくくて、はっきりした線が描けるような感じがした。本当のところどうなのかはわからない。

 

ユニのホルダーと芯

就職後もステッドラーのホルダーを使用していた。しかし、打ち合わせに行ったり、現場に行ったりしている内に見失う。代替品はないものか?と思いつつ、購入したのがユニのホルダーと芯だった。先述したように、あくまで個人的な感想ではあるが、ステッドラーの方は芯が硬く折れにくくはっきりした線は描け、ユニは芯が柔らかく折れやすい印象に感じていた。
その為、ユニは柔らかい芯を入れてスケッチ用にして、ステッドラーは製図用にしていた。皆さんはどうだろうか?気になる

変わり種:大人の鉛筆

 
北星鉛筆が販売している商品で、鉛筆と言っても要するに2mm芯のホルダーシャープペンシルなんです。私も一本持っていて、確かに使いやすい感じがしますし、軸がアメリカ産インセンス・シダー材なので結構いい感じです。戦後ノーカット鉛筆を開発し、その改良版が大人の鉛筆なんだそうです。芯はノック式でシャープペンシルの様に出てくる。
大人の鉛筆|書いて作って楽しい未来をクリエイト|北星鉛筆
北星鉛筆創業60周年記念として生まれた「大人の鉛筆」を紹介します。大人のための「大人の鉛筆」をはじめとした鉛筆や色鉛筆、木軸シャープペンシルに加え、おがくずを使った木のねんど「もくねんさん」、木彩画絵の具「ウッドペイント」などの文房具を製造...
ただ、製図用としては握り部分にノンスリップが無いので、線を引く時にホルダーを上手に回転させられない欠点は感じた。しかしながら、昨今殆ど清書としての製図はキャドにお任せしているので、文字やスケッチを描くには十分な製品だと思う。持っていると「それ、何?」という感じになるので、持っていたい商品だと思う。
ただ、欠点をあげるとすると、木製軸の為、筆箱に入れておくとどうしても表面が傷ついて、汚れやすくなる点かもしれない。
 

驚き:100均一のホルダーシャープペンシル

 
 
これはダイソーで見かけた製品で、なんと110円。サンノート(株)という会社が作っているらしい。ただ、木目調の雰囲気が大人の鉛筆に似ていて、姉妹品なのかな?と思いましたね。ただ、大人の鉛筆は木製軸だけれど、この製品は木製風の硬質プラスティックという感じである。大人の鉛筆よりは傷つきにくいが、多分落とした衝撃で割れる事はあるかもしれない。
でも110円だったら、ま良いか!のレベル。この製品も大人の鉛筆と同様、製図用としては握り部分にノンスリップが無いので、線を引く時にホルダーを上手に回転させられない欠点は感じた。しかし、昨今殆ど清書としての製図はキャドにお任せしているとして、文字やスケッチを描くには十分な製品だと思う。

 

シャープペンシル

シャープペンシルと製図

シャープペンシル

gaustin11によるPixabayからの画像

実はホルダーもシャープペンシルホルダーなので、シャープペンシルの仲間ととらえてよいけれど、ただ、ホルダーは2mmの芯を使うので、より鉛筆に近い感覚だった。就職した頃、職場でシャープペンシルを使おうとすると、先輩方から「ホルダーを使うようにしなさい」と指導された事もあって、製図にシャープは不向きなのだと思うようになった。
 
ただ、長く設計事務所にいると世代交代で、どんどん若い人が入ってくる。世代が変われば製図道具に関する考え方も変わる。1990年頃入社した青年がちょっと変わっていた。実はその青年、0.3mmのシャープペンシルで芯は何故か2Hだった。それじゃ図面なんか描けないよと思ったが、どうもそれを言いにくい。
 
 
出来た図面を見るとやはり線が薄くて、力がない、しかも字も下手。ダメダメ尽くしの図面なのだが、何故かプライドは一人前以上なので、誘導してあげられなかった。もっともそれから10年もしないうちに職場もCadを使う時代になったので、その青年は即座にCadに飛びついた事は言うまでもない。青年と言っても、いまやいいおじさんになっているのだけれど・・・
 

ぺんてるのシャープペンシル

ある意味、ぺんてるのシャープペンシルはよく使った。0.9mmか0.7mmだったか・・・手ごろな値段で買えるのがよかった。しかも持ち手の所がノンスリップになっているので、回転もしやすい。それこそ、香港から帰国して十年以上は使っていたかもしれない

私の愛用のぺんてる1.3mmマークシートシャープペンシル

2mmの芯を使ったホルダーは学生時代から使っているしスケッチをするのにも使える。しかしながら、実は芯研器か芯を削るカッターなどが必要になる。ペンテルのシャープの0.7mmや0.9mmを使っていたが、それでも芯が細すぎて困る事があった。そこで、その中間はないものかと思い探したらあった。虎ノ門交差点近くのオカモトヤにあった。
老舗純文具店 | 株式会社オカモトヤ
日本の文具と書く文化を伝える。100年見てきた虎ノ門の景色。歴史と、時代を繋ぐ純文具店として新たな100年を踏み出します。
それはぺんてるの1.3mmのマークシートシャープペンシルだった。従業員の人に教えていただいた。この製品にはハマった。かれこれ10数年以上使っている。もっとも、私自身1.3mmで描ける様なラフなスケッチ図ばかりを描くようになっていた現実もあった。

0.3mm~0.9mm

0.3mm-0.7mm or 0.9mmのシャープペンシルの内、私が使うのはせいぜい0.7mmか0.9mmで、それ以上細いシャープペンシルは使わない。

芯研器

やすり型芯研器

 
就職した頃は、先輩の何人かはこのやすり型芯研器を使っていた。学生の頃、芯の削り方も習っていて、実は均一な線を引くために芯を長めに出し、ヘラ状に平らにする。これを行うためにやすり型芯研器が必要なのだが、カッターナイフで丁寧に削ればそれは出来る。しかしながら、この削り方で芯を削ると熟練者でない場合、結構芯が折れるし、理想の均一な線になりにくい。
つまり熟練者ならではの削り方と考えていた。会社としてもその削り方を守らせるよりも、回転式芯研器で円錐状であるが、早く削って、早く書いてもらった方が良いと考えたのかもしれない。何とも言えないが・・・

回転式芯研器

先述した様に、就職した時は、平たく大きなヤスリがついたような芯研器を使っている先輩がいたが、会社からステッドラーのもう少しコンパクトな芯研器を支給された。
上の写真はWeb Site “つくりら“さんから拝借しています。 右後ろのベージュ色の芯研器がありますが、支給されたのはこのタイプで確か青色だったと思います。
https://www.tsukurira.com/columns/he005_1/
服をつくるうえで、裁断はとても重要です。その裁断に使う正確な型紙(パターン)を準備することもまた大事です。きちんとした型紙をつくれると洋裁の腕前はぐっとアップします。何となく引いている線を見直してみませんか? まずは型紙をつくるときに線を引...

定規類

勾配定規

就職した頃会社で支給された勾配定規はステッドラーの商品だったと思う。ただ、この勾配定規はうっかり床に落とすと、根元の方が折れて情けない状態になるので、気を付けないといけない。

三角スケール、竹尺

就職した頃、竹尺の良さをさかんに説く先輩が居た。持っていたのは細竹尺だった。現場を回りながら、細竹尺を使いつつ、説明してくれたっけ・・・その影響で私も細竹尺を暫く持っていたが、結局三角スケール一本になった。就職した際、30センチの三角スケールを支給され使っていた。三角スケールの芯は竹材で、伸縮のしにくいものだったようだ。
実は30センチの三角スケールは持ち運びに不便なので、15センチ長さの三角スケールを常時、胸のポケットに入れていたっけ・・・30センチであれば、一定の太さもあるので、竹芯が最適だと思うが、15センチの場合はプラ スチックの製品が多い。
又、お茶の水のレモン画翠で洒落たアルミ製の三角スケールもある。
建築にいちばん近い画材店
東京千代田区御茶ノ水の画材店「レモン画翠」では、建築模型、住宅模型のパーツ、建築模型材料、各種絵具、キャンバス、イーゼル、製図用品等の販売を行っています。また、多くの美術館で使用されている額装や、展覧会「レモン展」など多岐にわたり、創り手を...

コンパスセット

ステッドラーのコンパスセット

建築学科の学生になって、学校から推薦されて購入するものの中にコンパスセットがある。このコンパスセットを手にすると一気にいっぱしの設計屋になったような気持ちに陥る。私が学生の頃買ったセットは烏口(からすぐち)が入っていたが、最近のセットでは見当たらない。もう一つ、コンパスに鉛筆を指すためのアダプターがあった筈だが、それはあるのだろうか?

テンプレート

円定規テンプレート

実は、コンパスは思ったほど使わなかった。建築の図面はコンパスを使うような綺麗な円を描く機会が案外少なくて、グリッドナンバーは円定規(テンプレート)を使ってしまう為かもしれない。コンパスを使う業界はどちらかというと機械製図をする人たちだろうか?
 

字消し板

字消しもテンプレートの一つとしてとらえる。これは無くてはならないもので、散々使ってきたものだけれど、ステッドラーのメッシュ字消しがある。これは下が透けて見えるので、助かる一面もある。

又、字消しはこんな使い方があるという勉強になるのが、下のページで、消しながら絵を表現していくテクなので、非常に勉強になります。
 

刷毛類

刷毛は思ったほど重要視していなかった。直属の先輩の一人Eさんが、「図面の汚れよりも、内容のあるものを描きなさい」というタイプだったので、それに甘んじてあまり使わなくなった。ただ、図面の綺麗なRさんやNさんは非常に几帳面なタイプの人で、刷毛で綺麗にするだけでなく、表現力のある綺麗な図面をつくる術をしっかり持っていらっしゃった。憧れの存在だった。
考えてみれば、あの頃は、綺麗な図面が描ける事が上達の第一歩の様に感じていたものだった。
 

その他

設計をやっている人間にとって、文房具は不可分の存在というか、自分自身を表すものだと思う。今回は、比較的図面を描くための初歩的な道具を挙げてみたが、いずれ、ペン類やマーカーなどグラフィックな図面に関する道具も書いてみたいと思う。今回はこのくらいで・・・
 

関連ページ

https://omotenouchi.jp/archi-design/ https://omotenouchi.jp/archi-design-2/ https://omotenouchi.jp/archi-design-3

コメント

  1. うしとら より:

    学校が勧めるがまま購入した高価なコンパスや勾配定規を、ほとんど使わなかったことに対して親に負い目があり、ドラフターや平行定規は指を咥えて横目に見て、学生時代は製図板&T定規を貫きました。ドラフターや平行定規はマグネットを使えますが、製図板はドラフティングテープを使っていたことを思い出します。ステッドラーの三角定規にインクエッジが付いていなかったので、ロットリングで清書するときはドラフティングテープを貼って三角定規を浮かせていました。学生時代に生協で50円で買った字消板をグニャグニャになるまで使っていましたが、いつしか使わなくなり、気が付いたら紛失してしまいました。今でも図面チェック用赤鉛筆だけはホルダーを使っています。
    1997年がルーキーイヤーで、自分のCADとドラフター(中古)を社給され嬉しかったですが、ドラフターを使う機会は少なく、図面掲示板として10年くらい使って処分しました。なぜかドラフター付属の黄色い柄のプラスドライバーだけは手元に残っています。

    • 早速のコメントありがとうございます。
      1997年頃の話:
      1997年がうしとらさんにとってのルーキーイヤーとは感慨深いです。うしとらさんのデビューした会社の事情は分かりません。ただ、私の勤務先で言い換えますと、これから嵐の吹き荒れる大海原に立ち向かう前年というイメージだったと言えます。

      1990年代の前半は、バブル崩壊したとはいうものの、建設プロジェクトもまだ残っていましたし、再びあのバブルが来るんじゃないの?という仄かな期待感もあった。実際、1994年頃のボーナスは非常に良かったので、新車を現金で買ったくらいです。私は1996年に香港の常駐を命じられ、その新車も売らざるを得なくなりましたが、意気揚々としていました。ところが、1997年に山一證券や拓銀が破綻、そしてアジア通貨危機。1998年には長銀、日債銀の破綻。21世紀に入ってからは、建設会社関連では、青木建設、佐藤工業が破綻して、長谷工・飛島・熊谷・西松などは破綻までしなかったけれど、株価が一時50円くらいじゃなかったか?
      そんな背景があったからか、一気にホテルプロジェクトが減り始めたっけ・・・そして、リストラが始まった。これを何とか打開する為に、老人福祉施設の設計を請け負う様になった。
      私は、2000年に香港から帰国した当時はホテルプロジェクトが無くて、熊谷市の老人福祉施設の仕事をしていたっけ・・・

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