表の家

陸軍工兵学校の練習風景
科学朝日掲載


陸軍工兵学校の訓練

科学朝日昭和十八年七月号掲載

「科学朝日」・表紙
発行:朝日新聞社東京本社、発売所:朝日新聞社
昭和十八年七月一日発行

朝日新聞社発行の雑誌「科学朝日」において
戦前の陸軍工兵学校の訓練の様子が描かれている。
それぞれの写真に松戸との地域性は明確ではないが、
訓練内容について大変参考になるため掲載したい。

工兵技術の粋☆陸軍工兵学校☆
地雷探知機:怪しいと睨んだ箇所から、
地雷は「天眼鏡」と呼ばれる探査線輪によつて忽ちその伏在を探知されてしまふ

力作機:
二抱へもある木材でも、ハンドル一つで易々と宙に釣り揚げるのがこの力作機だ

製材車:木陰などの目立たない場所へ据えられた製材車、
伐木から製材へ極めて迅速な活動を開始する

熔接車:敵弾下の熔接作業も、この車両の出動によつて
一層有効な作戦が練れるのだ

目的地点へ一刻も早く戦車を輸送するためには、
全員一丸となつての注意ぶかい行動が必要だ

大操舟機の取付け一つにも日頃の訓練がものを言ふ、
終ればエンヂンの始動を待つばかりだ。

重門橋:渡河作戦には欠くことの出来ない重門橋、
舟長の命令一下、白浪を蹴立て煙幕を衝いて快走する

隠密に行動するためには掛声は許されない、
泛水一つにもかうした労苦が伴ふのだ

火焔発射機:火焔は草原を這つて堅固なトーチカ陣に迫る、
解るるものみな灼きつくさねばやまない凄じさ

戦車の揚陸も難しい作業の一つだ、
屈強な地点を選ぶと同時に機敏な処置を講ぜねばならない

工作車:敏速に、正確に、兵器の修理を行ふ工作車は、
いはば職場を往来する移動工場だ

高圧探知機:前進を阻む電流鉄条網も、
この探知機に発見されて威力を全く喪失してしまふ

発電車:坑道内の通風、排水、照明の電源是非とも
発電車の応援に待たなければならない

同誌巻末には新しい工兵器材
陸軍工兵学校教官の解説がQ&Aスタイルで書かれている。

P79

P80

P81

上記事全体をpdf化してます。下記をクリック
http://omotenouchi.jp/pdf/bindkijinew.pdf
ただし、ファイルが大きいため下記にテキスト化した。

新しい工兵器材
圓匙で泥を攫つたり、架橋や道路工事にのみ工兵の姿を想像したらそれは大きな誤りである。
支那事変を契機として、工兵の仕事は著しく変貌したし、また現にしつつある。
ここに解説した工兵器材は、現在使用されている新兵器のほんの一端に過ぎない(同・本誌記者 答・陸軍工兵学校教官)。



火焔発射機問
火焔発射機の構造はどんなふうになつてゐますか。
答:これは可燃性の油と、それを押出すもの、例へば圧搾空気とか窒素、
さういふものを入れる気蓄管とがあります。
それを管を通して発射管に導いて、発射管から可燃性油を押出すときに
点火して焔を作ります。
問:点火の方法は。
答:発射管の前に燃えてるものを出しておくのと、
雷管をつけておいて雷管の爆発によつて点火するのと、方式はいろいろあります。
問:その雷管には特別な仕掛けがありますか。
答:それはふつうの猟銃などと同じで、衝撃によつて点火します。
問:火焔発射機を扱ふ場合に一番苦心するのはどういふ点ですか。
答:敵弾下を現物へ持つてゆくまでが苦労です。
障碍物を超えながら、あれだけの重い者を背負つてゆくのですから、
目標地点に近づくまでが最も苦心を要します。
目標に近づいたら、もう占めたものです。
問:火焔発射機が戦争に現れたのはいつ頃ですか。
答:前の世界大戦の時でした。
火焔発射機といふものは一九〇一年にその発明者であるベルリンの技師
リカード・フィードラ氏がドイツ軍経理部に提出してをります。
つまり発明したのもドイツであり、初めて戦争に使つたのもドイツですね。
問:将来性の問題は。
答:将来ますます必要になります。
問:大東亜戦争では大いに活躍しましたか。
答:支那大陸では威力を発揮しました。
ロレヒドールでは、いよいよ使はうといふことになつた時に敵が手を挙げてましたから、
たうとう使ひませんでした。
問:マライでは。
答:スリムの戦闘では大いに使ひました。敵の機甲部隊をこれによつて全滅させたのです。
問:日本で一番初めに使つたのは支那事変ですか。
答:さうです。
問:火焔発射機の種類いろいろありますか。
答:大型と小型とあります。
大型ですと、二、三人で擔つたり車に積んでゆくやうな大きなものもあり従つて、
火力の強いものがあります。小型のほうは各人が携行してゆきます。
問:火焔発射機の目的、用途は。
答:主として敵のトーチカ、戦車さういふ堅固なる「術行物」に擔つてゐる敵を
やつつけるのが目的です。
答:これを専門に扱ふ兵があるわけですか。
答:工兵は誰でも扱へます。

地雷探知機(金属製地雷探知用)
問:探知の方法は。
答:地雷を敷設する場所は大体決まつてをりますから、
さういふ地帯で探知します。
問:このへんにあるだらうといふことは、
何によつて判るのですか。経験から割り出した勘ですか。
答:勘ではありません。
敵の敷設しさうな所を狙つて探知するわけです。
これを逆にいふと、戦車の進みたいと思ふ所には
地雷があるから、そこを狙つて探知する、
といふことになります。
問:大体の構造は
答:本体と、一名「天眼鏡」と呼ばれる探索線輪から
成つてゐます。
電磁誘導作用によつて、そこに地雷があつた場合は
計器の針が震へます。
また音を出して数へる方式のものもあります。
問:この輪はどういふ役目をするのですか。
答:ホイーストーン・ブリッヂ(電輪)と同じ原理を
応用したものです。
問:探索方法は、怪しいと思ふ地雷に万遍なく
当ててみるわけですか。
答:そうです。
問:実際の職場で使ふ場合に、
まだるつこいといふやうな感じはありませんか。
答:これは丹念にやるより仕方がありません。
主に夜間隠密に作業しますから、
計器には夜光塗料が塗つてあります。

高圧探知機
問:目的、用途は。
答:電化障碍物、いはゆる電流鉄条網を遠距か離ら間接に偵察するために使われます。まづ、どの方向にあるかを探知しまして、「交會法」によつてその位置を求めます。その構造は探知線輪、増幅装置などから成つてゐます。
問:電化障碍物の方向を見出す方法は。
答:まづ電流鉄条網の磁界の作業によつて探知線輪に起電力が起こります。それを増幅装置によつて測定に都合のよい大きさにまで拡大して、電流計とか受話器で探知します。
探知線輪を回転しながら管のいちばん小さい点を求めれば、探知線輪と平面方向に障碍物があるといふことが判るのです。

工作車
問:工作車の目的とか用途は。
答:いろいろな機材の応急修理とか、或ひは、
現地で急いでものを造るやうなことに用ひられます。
作業車付属車とから成り立つてゐて、作業車には発電装置、万能旋盤、切断機、電動穿孔機、電動研磨機、鍛工具、充電機、照明装置、その他作業台とか諸工具があります。
さういふものを備へつけて、各機材に応急作業が出来るやうになつてをります。
付属車のほうは、主として修理に必要な材料とか、天幕、人員の乗る座席などがあります。
問:動力は何を使ひますか。
答:自動車のエンジンを切り変へて発電機を廻し、
その電力で動かすわけです。
全部電動です。
ただ充電機は一個の発動機をもつてをり、それを動かして発電するわけで、充電には自動車の動力を使ひません。
問:作業の対象物は何ですか。
答:兵器の部品です。
問:工作機械を動かす兵器は経験のある人を選ぶのですか。
答:経験がなくても訓練をすればよいわけですが、経験があつたほうがよいことは勿論です。
問:実戦の場合は、かういふ特殊車両は後方にあるのですが、それともかなり前線まで出てゆきますか。
答:出てゆきます。出てゆくのが役目なのです。うしろのほうで修理その他を行ふのは、修理廠といふ大きなものがあります。この工作車は部隊と一緒に最前線に進んでゆきます。


製材車
問:どういう場合に使ひますか。
答:樹木を伐採したり、伐採した木材を角材又は板等、用途に応じて迅速に現地で処理するために使ふ車です。
樹木を伐採するためには、動力伐採機いふものを別にもつてをりますが、ほかにも斧とか鋸を備へてをります。
製材のほうは第一号車と第二号車になつてをりまして、第一号車に帯鋸があります。
これは自動車のエンジンの動力を帯鋸に伝へて回転させて製材するのに使ひます。
第二号車には帯鋸の修理装置があります。
例へば、鋸の目を立てるものとか、歪み取り機、切断したときの蝋付け、さういふ修理の装置があります。

問:動力を切つてからもしばらく廻つてゐますね。
答:それは、ブレーキを急にかけると帯鋸が切れますから、それを防止する意味で自然に停止するやうにしてあります。
問:帯鋸は材質によつて目の荒い鋸、或ひは目の細かい鋸といふやうに取り替へられますか。
答:大体一定してをります。
問:すると、大型のものを描くのが主で、小さいものには向きませんか。
答:向きません。小さいものを処理するには、振留め機を上げ下げして調整するだけです。
問:鋸の振れを押へようといふわけですね。
答:口絵写真は腹押しの製材法であつて、実際の場合はレールをつけて送材車といふものに乗せて、固定して挽くわけです。

熔接切断車
問:熔接切断車といふのは。
答:野外において迅速確実に鉄材を熔接したり、切断したりするのに用ひる車です。熔接のために電弧熔接装置があり、切断のために酸素アセチレンガスの切断装置があります。
電弧熔接は地方で一般にやつてゐますから、どなたにもおわかりと思ひます。酸素アセチレンガスの切断装置もおわかりでせう。さういふ装置に移動性を付与しただけのものです。

力作機
問:力作機といふのは、どういふ役目をするのですか。
答:重いものを取扱ふ場合に使ひます。
つまり、容易に旋回出来る臂式の起重機を備へた装軌車両です。
起重機は昇降機と捲揚げ柱の俯仰機、それから、
囘転盤の旋囘機から成つてゐて、車の機関から動力を
起重機に電動します。
問:どうしてこの車だけは履帯がついてゐるのですか。
答:これは土地の状況の悪いところなどで作業することが多いのですから、重量物を揚げるときには、このほうが安定がよいわけです。

発電車
問:この車両の説明を一つ……。
答:随所に移動して、迅速に電力を供給するために
使ふ車です。
車を停めておいて、車の機関の動力を発電機に伝へて
発電します。
それで車は車体と発電装置とケーブルから成つてをります。


重門橋
問:重門橋にとりつけた操舟機には特別の仕掛けがありますか。
答:ありません。ふつうの発動機船などに付いてゐるのと
同じ原理です。さうして燃料はガソリンです。
問:乗員の配備は。
答:舟を指揮する人を舟長といひ、操縦する人を操縦手、
機関を動かす人を助手といひます。
この助手は機関の調整とか点検をやります。
問:重い物も積めるわけですね。
答:馬も乗るし、戦車も乗るし、自動車も乗ります。
しかも岸から岸まで送るだけでなくて、川を遡つたり下つたり走ることもあるわけです。
問:敵火の下では煙幕が相当重要な働きをすることになりますね。
答:大体は夜間におこなひますが、昼間に強行すらうなときは、煙幕が絶対に必要です。
問:この舟に乗込む人の服装は。
答:行動を迅速にするために軽装にいたします。それから靴だと底に鋲が打つてありますから、滑つて転んだり音をたてたりします。それを防ぐために地下足袋をはかせます。それから水上作業ですから救命胴衣をつけます。
問:重門橋を組立てるのは、相当時間がかかりますか。
答:いや、簡単にできます。解体もすぐできます。
(検閲済)

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