表の家

電車よもやま話26-30 常磐線千代田線のアレコレ 


30 キセルはダメよ! part-2 - 松戸編


阿佐田哲也の小説の中にギャンブルで文無しになった主人公が、無賃乗車で東京に帰るのだが、車内改札も何とかすり抜けて最後は新宿駅の改札を無理矢理突破する・・・という下りがあった。
あの頃は改札の中に駅員が居るので改札突破はかなりのリスクだったと思う。それに比べて現在は自動改札という事もあって駅員が近くにいる事はいるが事務所の中から数台分の改札を漠然と眺めている様にしか見えないので、多分見落としも多いと思う。
現在のIC乗車券(パスモ、スイカ)は直前の人の改札タイミングで自分のIC乗車券の改札されない恐れがあって、IC乗車券が無記録のまま出てしまう事がある。しかもその時に気がつかないで、帰り再び乗車するときに気がつく有様である。

又、困るのが、自分の前の人がIC乗車券を感知パネルに中途半端に接触しないまま通ろうとして、私が間髪を入れずIC乗車券を感知部に接触させてしまうと前の人が通ってしまい、自分は通れないという状況があるように思う。あ、やっちゃったか・・・と思うけど遅刻しそうになって時間の無い時は無理矢理改札をすり抜けてしまいたくなる。
自分だけかと思ったら、こういう状態の人は案外多い様だ。

止むを得なくそういう状態になるのは仕方がないとするが、先日松戸駅のボックスヒルに出る改札でこういう人達がいた。
それは歳にして70歳近く、服装もキチッとして金銭的には全く心配の無さそうなオバタリアン二人連れが私の前を歩いていた。ところが驚いた事に乗車券を改札する事なく堂々と何食わぬ顔で力で改札ゲートを抜けてしまった。年配女性でも侮れないすごい人達だな・・・と思い、10メートルくらい後を付いて顔を見てみたが、笑うでもなく仏頂面でまっすぐボックスヒルの雑踏の中に消えていってしまった。悪いことしっちゃった・・・という反省の色も無く、堂々とやってのけてしまう感じからして多分、悪質な常習犯に違いない。
考えてみれば、松戸駅に中央コンコースからボックスヒルへ入る所の改札ともう一つの北側のブリッジからボックスヒルに入る改札は駅員が常駐していないので、常習犯も利用したがるスポットかもしれません。JRも気をつけた方が良いかも・・・

29 クロウ(Crow)でクロウ(苦労)・・・ − 千代田線、常磐線各駅停車


目の色変えて、座席取りばかりに気を取られていると、頭上から思わぬ副産物が…!!

プラットホームからコンコースの床下を見上げると、薄暗く、灰色の梁とデッキプレートの下に照明やケーブルダクトなどが走っているだけのはらわたの様な場所で、普段は全く興味を惹かないが、あの日を境に頭上にも注意をそそぐことになった。
ある日、午前8時36分始発の到来を待ち、いつもの列の前から三番目に立っていた私はiPhoneでjazzを聞きのんびりしていた。

すると新京成の車両上部に居た一羽のカラスがす〜と我々のプラットホーム上に飛んできて、ケーブルダクトの上にとまった。
「イヤだな!」と思った。プラットホームに限らず、電線であろうと樹木であろうと、どんな場所でもカラスの直下には立ちたくない。何故ならば歓迎されざる副産物をいただいてしまうからだ。
頭上だけに、座席ゲットよりもカラスの動向に注意せざるを得なくなった。落ち着かないものである。
私は念じた「離れろ…!!」
願いが通じたのか否やか、カラスは我々の左隣の始発待ちグループ上のケーブルダクトに移っていった。再び移動しさらに次の左隣のグループ上に移った。どんどん左に離れる様を見て、束の間の安心を得た。

自分の場所が大丈夫と思うと、ついつい野次馬根性が台頭してくる。
「そろそろかな?」と思っていたのだ。
私はカラスとその直下ばかりを眺めていた。ところが、その直下のグループの誰もカラスの存在に気付いていない。
少しずつ移動したので気付かなかったのか?或いは座席ゲットに集中していたのか?いずれにしても、そのカラスを眺めているのは私だけだったようだ。

私の左に立つ中年男性が怪訝そうに「何故俺の方を見る」という顔をした。
やれ困ったなあ・・・今良いところなのよ・・・と思いつつ、兎に角左方面頭上を注視していた。
次の瞬間、カラスが伸びをした

あっ!と思った瞬間、尿酸たっぷりの白色物体が引力に従い落下した。
人に落ちなければ良いなあ・・・特に女の子だと可哀相だなあ・・・と暫く眺めていたが、誰も反応を示さない。
野次馬根性はもはやこれまで・・・
多分、床に落ちたのだろう・・・良かったね!

と思ったのも束の間、白シャツで、眼鏡を掛けた神経質そうなイケメン・サラリーマン(
イケメン・フンちゃん)に小さな変化があった。イケメンらしくとても落ち着いた様子であったが、イケメン・フンちゃんは右手で自らの左肩を拭った。その後、ベトベトになった右手指をクチャクチャさせながら茫然と眺めていた。
イケメン・フンちゃんは自分の身の上に何が起こったのか全く理解出来なかった様である。
徐々に冷静になった
イケメン・フンちゃん、自分の置かれた状況に気がついたらしい。カバンからスゴスゴとティッシュペーパーを出し、左肩を拭いていた。

そんな
イケメン・フンちゃんの様子を眺めていたら、8:36分発霞ヶ関行きが滑り込んできたので私は座席ゲットに集中し、座席に座った。その後、イケメン・フンちゃんの方向を見るとしっかり座っていたが、実に寂しそうな顔をして左肩を何度も拭いていた。
暫く
イケメン・フンちゃんの様子を眺めていたが、電車が動き出し、金町駅の乗客でイケメン・フンちゃんの姿が見えなくなった。

28 「×××せ×くだ××、ダメ?」 − 千代田線、常磐線各駅停車

常磐線各駅停車八時四十一分発に乗車、綾瀬で乗換えやっと座席に座り安堵の気持ちでPodCastを聞いていた。北千住に到着すると大きな雨合羽を体に覆った変な成りのおっさん(かなり年輩だと思う)が乗り込み、シルバーシート付近に歩いて行った。そして突然大きな声で叫んだ。
「×××せ×くだ××、ダメ?」

車両中にこの叫び声は響いた。
「×××せ×くだ××、ダメ?」
当初この雨合羽おじさんが何を言っているのかさっぱり分からなかった。
ただ、最後の「ダメ?」だけは良く聞こえた。
何がダメなのか?

その後、何度も何度も繰り返した。
「×××せ×くだ××、ダメ?」
どうやら「座らせてください。駄目?」と言っているらしい。

他の乗客もこの雨合羽おじさんの切願に気が付いたらしい。それでもシルバーシートの席は空かなかった。乗客たちの怪訝な視線がシルバーシートに向き始めた。それは「おいおい、誰だ。そんなにお願いされるなら譲ってやれよ」的視線である。雨合羽おじさんの目の前に座っていたのは、60歳近いサラリーマン男性。この雨合羽おじさんのお願いをシカと無視して新聞を読み耽ていたんだな。頭のおかしい奴に絡まれているくらいの感じだったに違いない。気持ちもわかるんだけどね……

さらに「座らせてください。駄目?」コールは続いた

そのうち、この状況に耐えられなくなった隣の25〜6歳の青年が立ち上がってしまったんだな。
「どうぞ!」
雨合羽おじさんは子供のような声で言った。
「あ・り・が・と」

この結果、一部始終を見ていた周囲の乗客による「何で25〜6歳の青年が出来て、60歳に手が届くおっさんができないの?」的視線がそのサラリーマン男性のみに一斉に集まってしまった。
勿論無言でだが、ああいう視線は鋭く痛い。それでも、その中年男性は平気の平佐(へいきのへいさ)。蛙の面に水というか、私には到底真似出来ないふてぶてしさに頭の下がる思いだった。
根津駅で雨合羽おじさんは下車した。プラットホームには車椅子とともに駅員が待機していた。雨合羽おじさんはその車椅子に乗って行った。

27  知っているけれど何故か知らない人−松戸駅


父に聞いた話だ。父がある時父兄参観の為、学校へ行った。たくさんの父兄が集まっている。廻りは知らない人ばかり。「当然だな」と思いつつ立っていると何故か「顔見知りらしき人」に出会った。何となく会釈をした。
その「顔見知りらしき人」も同様に会釈を返した。そもそも知らない人なので何を話して良いのか分からない。その人も父を思い出せないらしい。
結局会釈だけで何も会話もせずに終わった。帰宅後「あの人は誰だったのか?」と自問自答を繰り返すが結局は思い出せなかった。

そして数日が過ぎた。そんな記憶も薄まりつつある日、通勤で松戸駅の改札を通過した。その時「ハッ!」となった。
何とあの「顔見知りらしき人」は国鉄の職員で改札口に立っていた人だった。改札にどんな人が立っているか?というまで、いちいち覚えていない思い出すはずがないよなあ……
(注:十数年前までは改札口には人が立っていて切符切りや、定期のチェックをしていた)

26 キセルはダメよ! - 松戸編

松戸駅のコンコースは通勤時でなくても混雑して乗降客が右往左往している。自動改札だからこそ処理しきれるものの、改札で切符を切る昔の方式のままだったらどうなってしまっていたか……
人的改札の頃、乗降客の定期券を効率的にしかも正確に改札するにはどういう訓練が必要なのかとても興味があった。
そこで知り合いの元国鉄職員に聞いたところ「定期券の文字は見ることは見ますが、実際正確なチェックは難しい。どちらかというと挙動不審かどうかによって見分ける方がウエイトが高いのですよ」と言っていた。学生時代、定期券範囲外の駅でうっかり降りてしまった事があった。難なく改札を通過してしまった後はっと気がついた。堂々と降りたためか改札で全く気付かれなかった。

大学時代、東武東上線の中板橋駅付近に住んでいた友人(徳島県出身)が居た。いよいよ大学を卒業し帰省する際、中板橋の家から東京駅まで見送る事にした。当時東武東上線は厚紙の切符で改札鋏の省略もしていなかったため、池袋で切符を返す事なく東京駅に行ってしまった。東京駅の一般コンコースで入場券を買い新幹線の改札を通った。

プラットホームで友人を見送り、さあ、松戸に戻ろうと思い、新幹線の改札を通過し一般コンコースに出て暫く歩いた後「ハッ!」となった。私が新幹線の改札で駅員に渡したのは新幹線の入場券でなく、東武東上線の堅い切符だったのだ。これを新幹線の駅員は全く気が付かなかった。私も私だが駅員も駅員である。しかし、無自覚だからこそ出来たものの、もう一度意識的にやろうとしても出来るとは思えない。

中学生の頃、ある年配の先生からキセル(区間分の料金を支払わない不正乗車)の自慢話を聞いたことがある。その先生は友人の居る土地に旅行する際、友人に駅まで向かいに来てもらう。友人に入場券を買ってもらい、構内で受け取り出てきてしまう。入鋏の省略もする駅もあったであろうし、そんな牧歌的なやり方が通用したのかもしれない。

学生の頃、旧国鉄の職員と酒を飲み交わしながらキセルの興味深い話をしたことがある。その旧国鉄職員も色々な手口をああだ、こうだと捻りだし、頭の体操として面白い話題だった。その中で私が「こういう方法はどうだろうか?」と問うてみた。
「乗越し運賃の精算をするとスーパーのレシートの様な紙を精算済みとしてくれますよね。見てもすぐに内容を調べにくいし、精算済みの紙だと思えば駅員もノーチェックで通してしまうかもしれない。そこでスーパーのレシートを改札に渡して出てしまったらどうでしょうかね?」
旧国鉄職員「なるほど……それは面白い考えですが、直ぐ拡げられないように、クルクルっと巻いて渡せば完璧ですね」

(注意:話題に出しただけで実際にはやってないのでよろしくお願いします。牧歌的な昔話として寛容に読んでくださいね)